「熊の場所」

舞城王太郎熊の場所」(講談社文庫)読了。
純文学系の作品が好きな友人から薦められた作品。
短編を3本収録した短編集です。


他の舞城さんの作品は読んだことがないのですが、この作品は途切れることなく連続した文章がとても特徴的です。
1人称で文章の途切れを少なくしたため、「語り手によって語られている話」という印象がとても強くなっています。
これによって、現実に居そうになくて、でも居そうな登場人物たちの、現実になさそうで、でもありそうな物語が、読者の身近に感じられるようになっています。
これはつまり、読者に作品の主題が伝わりやすくなった、ということではないでしょうか。
そしてもう1つの特徴が、擬音というか、砕けた表現を使っていること。
これは特に3本目の「ピコーン!」(この時点ですでに!)で顕著なことで、「イェーイ」とか「ウォ」といった砕けた言葉が多く使われています。地の文で。
3人称ではなんというか、「アウト」ですが、これは1人称だから「アリ」だと思います。


ただ全体的に、はっちゃけていて、ちょっと私の感性には合わなかったのですが。
それでもかなり楽しめる作品でした。
メフィスト賞受賞作家は、伊達ではないということか。